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     書 評 課 題 (第2回)  
  辻大介ゼミ7期    
 

井上薫 著
『法廷傍聴へ行こう』法学書院、2005年

法廷傍聴の意義

 平成16年5月、「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が公布され、平成21年5月までに裁判員制度が実施されるようになった。この制度は、一般の国民の中から選ばれた裁判員が裁判官とともに裁判所を構成する点に特色を持つ為、国民の裁判に対する意識が高まっているように感じる。それにともない、法廷傍聴記なるものや法廷傍聴を綴ったブログが出回るなど、法廷傍聴への関心も高まっているのではないだろうか。本書は、法廷を傍聴して何の役に立つのか、現実に傍聴している人は何の目的をもってしているのかについて書かれている。
 法廷を傍聴することでそれなりの情報を獲得することができるが、その情報をその後どう役立てるかによって、聴人をいくつかのグループに分けることができるという。
 第1は、学校教育の一環として学生が傍聴する場合である。法廷は、権利が侵害されたのを救済する途中経過を示すものなので、その理解によって権利を具体的に身近なものとして実感することができるという、学習の一部として大変有意義である。
 第2に、社会勉強として社会人が傍聴する場合である。これらの傍聴の動機は、ある特定のもので一貫しておらず、いわば社会勉強の一環として傍聴を利用しようというものである。
 第3に、訴訟に関係のある職業にある人が、自己の職業の遂行に役立てようと傍聴する場合である。たとえば、警察官、保護司、マスコミ関係者、司法書士などである。
 第4に、事件の関係者が傍聴する場合である。民事事件では当事者の身内、刑事事件では、被告人や被害者の家族が傍聴する場合が多く、事件の行方が傍聴人個人に何らかの利害が絡んでいることがあるため、法廷でのやり取りを自分のこととして熱心に耳を傾けることになる。
 第5に、野次馬根性や暇つぶしで傍聴する場合である。著名人が当事者である事件やマスコミで大きく報道された事件では、傍聴人が多数行列し、抽選で傍聴券を交付する場面が見られる。
 第6に、裁判の監視を目的として傍聴する場合。第7に裁判所に圧力をかけて一方当事者に有利な裁判をさせるために傍聴する場合がある。
 以上のように、傍聴の目的によって傍聴人をいくつかの類型にわけることができ、傍聴の意義がある程度理解することができた。しかし、先の裁判員制度導入において、法廷傍聴がどのような役割を果たすのか、また社会にどのような影響をもたらすのか深く述べられてない。これらを今後の研究課題にしていきたい。

2006/03/31
[ 評者: 岩脇 絵里 ]

 
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