[ home ] [ back ]
 
     書 評 課 題 (第1回)  
  辻大介ゼミ7期    
 

仲川秀樹 著
『サブカルチャー社会学』学陽書房、2002年

分散したメディアによる分散した流行

 サブカルチャーは年代によってその言葉の使われ方や感じ方に違いが生じている。これは本書でも述べられているように、分散化した大衆社会の下位文化や、分散したメディアによる分散した流行が原因であろう。
 サブカルチャーはその名の通りに捉えるとサブ(副)の文化であるが、この捉え方は近年ではあてはまらない。サブとはいいながら中心に入ろうとするのである。70年代を起点として女子高生は新たなカルチャーを作っていくが、その領域は集団内に限定されたものではなくなり、中心の文化または最先端の文化という役割をするようになる。
 またこれまでの研究によれば、流行のリーダーは若い未婚の女性において典型的であり、その理由は社会生活でもプライベートな部分でも制約を受けることが少ないからだという。
 女性は、ファッションに経費を書けることが多く、70年代からかわるがわる流行を作っていっている。ところが2000年ごろからは女性のファッションにはある一定の特徴を持つものの、「〜系」といったタイプ別の区分をさせるようになっている。これも分散化の特徴だという。雑誌の種類が多様だというのも分ける原因のひとつになった。その中でも本書では「JJ」に注目し論じている。キャンパス・ファッションの「ハマトラ」の流行、そしてその流行についても論じている。「都市に住む女の子」というコンセプトに敏感に反応し、お嬢様願望のようなものを根付かせ、誰でも洗練された都市に住む女の子になれるという意識を働かせることになった。それが社会的同調行動を生み、模倣的伝染として流行したと捉えている。雑誌というマスメディアがお手本として用意され、それが女性の心理とうまくあわさることとなったということだ。
 流行を流行にするのはマスメディアで、その時代時代にある人々の潜在意識とその表出が流行発生の過程のかかわりによって総括される。そしてそれを見たコギャルなどがまねをするようになり、世代を超えたものになっていくのである。
 流行には終わりが必ずあって、その原因となるものは次の流行の波である。なぜ次の流行というものがうまれるのか、そしてどこからどのように流行となっていくのかは今後調べていく必要があるかもしれない。だが、その原因には当時の社会背景が関係しているのは間違いないだろう。
 近年の場合流行とはファッションに限定されるものではなく、サブカルチャーを含め複雑であり、コギャルによって定着するものも多い。
 ケータイ(携帯電話とPHSの総称)などやメールなどは女子高生が広げたといっても過言ではないし、今日では当たり前のように誰でもどこでも使っているのを目にするものである。

2006/10/28
[ 評者: 河合 智也 ]

 
06 < index > 07